'''情報'''(じょうほう)は、生物の行動に影響を与えるすべての事象である。環境中の光や音、神経の発火やホルモンなどの生体シグナルをはじめ、あらゆるものを「情報」とみなすことができる。歴史的には、事象、事物、過程、事実などの対象について知りえたこと、「知らせ」の意味で使われてきたが、情報理論の発展によって、より広い意味で使われるようになった。
対応する英語の "information" は、最も技術的に解釈すればシンボルを並べた列であるが、概念としては様々な意味を持つ。通信とコミュニケーション、制御、教育、知識、意味、パターン、知覚、知識表現といった概念と密接に関連する。日本語の「情報」は1876年に出版された『佛國歩兵陣中要務實地演習軌典』において、仏語 renseignement (案内、情報)の訳語として「敵'''情'''を'''報'''知する」意味で用いられたのが最初である。
"information" は、ラテン語の主格 の対格 が語源である。さらにその語源は動詞 (知らせる)であり、「精神(思考)に形を与える」、「整理する」、「命令する」、「教える」といった意味もある。
"information" の語幹である "form" は、古代ギリシア語では (''morphe'') および (''eidos'') すなわちイデアであり、後者の語はプラトン(およびアリストテレス)が哲学用語として使ったことでよく知られている(イデア論)。"eidos" は思考、命題、概念といったものとも関連が深い。情報はしばしば、生物や人工の装置への入力とされることがある。入力は2つに分類される。ある種の入力はその生物(例えば、食物)や装置(例えば、エネルギー)が機能を維持するのに重要な役割を果たす。Dusenberyは著書''Sensory Ecology''の中でそのような入力を原因入力 (causal input) と称した。他の入力(情報)は原因入力との関連性においてのみ重要であり、将来、いつどこで原因入力が得られるのかを予測する役に立つ。一部の情報は他の情報との関連において重要だが、最終的には原因入力との関連がなければ意味がない。実際、情報は通常弱い刺激として何らかの感覚システムで検出され、エネルギー入力によって増幅されてから生物や装置にとって意味のあるものになる。例えば、植物にとって光は原因入力であることが多いが、動物にとっても情報を提供する。花の反射する特定の色の光は光合成を行うには弱すぎるが、ミツバチの視覚はその光を検出し、蜜や花粉という原因入力を見つけるのに使う。植物側から見れば、そのような情報を発信することでミツバチを引き寄せ、受粉を手伝わせるという意味がある。
情報とは様々な種類の知覚入力である。神経系を持つ生物が入力を得たとき、その入力は電気信号となって神経を伝達する。例えば、抽象絵画を見たとき、具体的には何も表していないにも関わらず、その視覚信号は脳に伝達される。そういう意味では情報は必ずしも有益な真実、通信、表現と関連しているとは限らない。エンターテインメントは一般に有益であることを意図していない。音楽、舞台芸術、遊園地、フィクション作品などは知覚入力という意味では情報の形態だが、原因入力に関連するような情報ではない。また、食物は栄養と味覚という入力を提供するが、情報が知覚入力だという定義に従えば、栄養は情報ではないが味覚は情報である。情報はなんらかのパターンであり、それによって別のパターンの生成・変換に影響を与えるものである。そういう意味では、そのパターンを知覚する意識は不要であり、パターンを評価する必要もない。例えばDNAを考えてみよう。そのヌクレオチドの配列は有機体の形成や発育に影響を与えるが、そこに意識が介在する必要はない。システム理論における情報はこの意味であり、意識がなくとも情報は存在し、システム内を(フィードバックによって)循環するパターンを情報と呼ぶことができる。すなわち、この意味での情報は何かを表現している可能性はあるが、もともと何かを表現することを意図したものではない。
しかし「影響」という言葉に情報は何らかの意識が受け取って解釈するものだという前提が含まれているとしたら、特定の文脈におけるこの解釈は情報から知識への変換を生じる可能性がある。「情報」と「知識」の複雑な定義は意味的・論理的な分析が難しいが、情報から知識への変換の条件は重要なポイントであり、特にナレッジマネジメントにおいて重要である。知的労働者が調査し判断を下すとき、次のような過程を経る。
効率的に価値と意味を引き出すために情報を吟味する。
可能ならばメタデータを参照する。
考えられる多くの文脈の中から、適切な文脈を確立する。
その情報から新たな知識を引き出す。
得られた知識から、何らかの意思決定または推奨を行う。
Stewart (2001) は、情報から知識への変換が現代の企業にとって価値創造と競争力の中核であり、最も重要だとした。
マーシャル・マクルーハンはメディアとその文化的影響について、様々な人工物の構造を参照し、それらが人類の行動や思考様式を形成しているとした。また、そういう意味でフェロモンも「情報」だと言われることが多い。2003年、ヤコブ・ベッケンシュタインは物理学で大きくなりつつある傾向として、物理世界が情報自体で構成されているという見方があるとした(デジタル物理学)。物理学における情報の定義は明確である。例えば量子もつれ現象において、2つの粒子が分離して参照されていない状態で光速を超えて相互作用する。ただし、情報を間接的であっても光速を越えて伝達することはできない。2つの粒子が離れ、一方の粒子が観測されて量子状態が決定されたとすると、自動的に他方の粒子の量子状態も決定される。
もう1つの関係はマクスウェルの悪魔という思考実験で示されている。この実験では、情報ともう1つの物理的属性であるエントロピーの直接的関係が示されている。その結論は、系のエントロピーを増大させずに情報を破壊することはできないというものである。エントロピーの増大とは、一般的には熱の発生を意味する。より哲学的に考えれば、情報とエネルギーは相互に交換可能である。この考え方を論理回路に適用すると、ANDゲートが発生する熱エネルギーの理論的最小値はNOTゲートのそれよりも大きいということになる(ANDゲートは2ビットを入力として1ビットを出力するため、情報が破壊されているが、NOTゲートでは単に反転させるだけで情報が破壊されていないため)。物理的属性としての情報は、特に量子コンピュータの理論において重要である。記録は情報の特化した形態の1つである。記録とは、経済活動や取引の副産物として生み出され、その価値が認められて保持されている情報である。その主たる価値とは、その組織の活動の証拠としての価値だが、情報としての価値から保持されることもある。記録管理は記録の完全性を保証し、それらを必要なだけ長期間に渡って保持することを目的とする。
記録管理における国際標準として ISO 15489 がある。その中では記録を「組織または個人が法律上の義務に従って、または業務上の取引において、証拠として作成し、受け取り、維持する情報」と定義している。International Committee on Archives (ICA) は電子的記録に関する国際組織であり、記録を「何らかの活動の開始・遂行・完了の各段階において生成・収集・受信された特定の記録情報であり、十分な内容と構造を有していて、その活動の証拠となるもの」と定義している。Beynon-Daviesは、記号および信号-記号系における情報の多面的概念を提唱した。記号自体は記号学における4つの相互依存したレベル、層、分野、すなわち語用論・意味論・統語論・Empiricsにおいて考慮される。これらの4つの層は、社会と物理世界や技術世界を接続する役目を担っている。
語用論は、通信やコミュニケーションの目的を扱う。語用論は、記号の発行と記号が使われる文脈とを接続するものである。語用論が注目するのは、コミュニケーションを行おうとする者の意図である。言い換えれば、語用論は言語と行為を結びつける。
意味論は、コミュニケーション行為によって伝達されるメッセージの意味を扱う。意味論はコミュニケーションの内容を考察する。意味論は記号の意味を研究するもので、記号と行為の関係を研究するものである。意味論は記号とそれが指す概念や指示物の関係、特に記号と人間の行為の関係を研究するものである。
統語論はメッセージを表現する際に使われる形式を扱う。統語論はコミュニケーションにおける記号体系の論理や文法を研究する分野である。統語論は記号や記号体系の内容よりも形式を研究する分野である。
Empiricsはメッセージを伝達する信号、通信媒体の物理特性についての研究である。Empiricsは通信路とその属性(例えば、音、光、電子など)を研究する分野である。
Nielsen (2008)では、辞書における記号学と情報の関係を論じている。そこで提唱された という概念は、辞書を使う際に目的の項目を見つけるのにかかるコストと、その項目に書かれている内容を理解して情報を生成するのにかかるコストを指すものである。
通信やコミュニケーションは、一般に何らかの社会的状況の文脈の中に存在する。社会的状況により、伝えようとする意図(語用論)とその形式(統語論)が決定される。コミュニケーションにおける意図は、コミュニケーションに関わる者が相互に理解可能な言語から選択した記号を並べたメッセージで表現される。相互理解が成り立つには、コミュニケーションで採用した言語について統語論と意味論における共通認識が成立していなければならない。送信側はメッセージをその言語で符号化し、何らかの通信路 (Empirics) を経由して信号としてメッセージを送る。どのような通信路を選択するかによって、コミュニケーションの速度や通信可能な距離などの属性が決定する。
Shu-Kun Lin は新たに情報を「データ圧縮後のデータ全体」と定義した。 Alan Liu (2004). ''The Laws of Cool: Knowledge Work and the Culture of Information'', University of Chicago Press
Bekenstein, Jacob D. (2003, August). Information in the holographic universe. ''Scientific American''.
Luciano Floridi, (2005). 'Is Information Meaningful Data?', ''Philosophy and Phenomenological Research'', 70 (2), pp. 351 – 370.
Luciano Floridi, (2005). 'Semantic Conceptions of Information', ''Stanford Encyclopedia of Philosophy'' (Winter 2005 Edition), Edward N. Zalta (ed.).
Young, Paul. The Nature of Information (1987). Greenwood Publishing Group, Westport, Ct. ISBN 0-275-92698-2. 情報理論 - 情報量 - 情報源
計算機科学 - サイバネティックス - 図書館情報学
情報学 - 情報科学 - 情報工学 - 情報処理 - 情報処理システム - 情報システム
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情報文化学会
複雑性 - 複雑適応系 - 複雑系
抽象化
正確度と精度
電子媒体
受信者操作特性
シャノン=ハートレーの定理
グレゴリー・ベイトソン Principia Cybernetica entry on negentropy
Fisher Information, a New Paradigm for Science: Introduction, Uncertainty principles, Wave equations, Ideas of Escher, Kant, Plato and Wheeler.
How Much Information? 2003 - 毎年どれだけの量の新たな情報が生み出されているかを見積もる試み。(at the at the University of California at Berkeley)
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』