'''鼻'''(はな)は、動物の器官のひとつで、嗅覚をつかさどる感覚器、そして呼吸をするための呼吸器である。餌の臭いを嗅ぐ点で、口の補助的役割も勤める。鼻は脊椎動物に見られる構造で、鼻孔を囲む部分である。鼻孔は魚類以上の脊椎動物にすべて存在するが、その部分が鼻としてまとまっているのは哺乳類だけである。
一般的な哺乳類において、鼻孔は頭の前端にあり、その周囲はやや周辺とは異なった盛り上がりを見せる。これが鼻である。ただしイルカやクジラ類は鼻孔が頭部背面にあり、鼻は見られない。
鼻は口の上にあり、口よりやや前に突き出し、餌をとる寸前の確認に使われる。表面は感触器で、鼻腔内は嗅覚器としても機能する。豚やイノシシでは鼻先は地面をかきわけ、餌を探すなどの役割を担っている。もっともよく鼻を使う動物はゾウであろう。
ヒトの鼻は、顔の中央、凸の部の位置にあたる。狭義では内鼻、広義では外鼻を指している。人の鼻の特徴は鼻腔の上側の部分が前に突き出していることで、そのため鼻孔は下向きに開く。外鼻の上部は前頭骨・鼻骨・上顎骨から、下部は鼻軟骨から成る。なお、ヒトは複雑な発声を行う動物として知られている。鼻の部分も声道の一部として、声のシンセサイズに関係しているものの、可動部がほとんど無い(鼻孔周辺を動かせるに過ぎない)などの理由で、その効果は限定的。また、機能面(嗅覚)では、イヌなどと比べるとヒトは大きく劣っている。漢字で、元来、嗅覚器官の鼻を意味する象形文字は「自」(zi)であったが、この語が「はじまり」という意味を示すようになったため、あらためて嗅覚器官を指す「鼻」(bi)の字がおこってきたものと考えられる。「自」の字がさらには「おのれ」を指すようになったことには、中国の文化において、鼻が人を形作るはじまりのもの、と考えられていたらしいことが推察される。現代の日本で、自分を指すジェスチャーとして人差し指などで自分の鼻を指さす行為が見られるのはこの影響とも考えられる。なおこのジェスチャーは、文化によっては侮辱行為になるので注意が必要である。
"はな" という和語は、「はじまり」「先頭」などを意味する。「はなから分かっている」「出端(でばな)を挫く」などと形容し、下駄の鼻緒は鼻の形をしているからではなく先頭にあるからである。また、漢語においても「物事を最初にはじめた人物」を「鼻祖」というなどの表現がある。
漢字では、「洟」と書き分けるが、鼻水をも“はな”という和語でいうことができる。日本語で、鼻に似た、鋭角に突き出た形状のものを「鼻」と呼ぶ例もある。
岬 - 多古鼻、荒岬鼻、生地鼻 など
砂州 - 妙岐の鼻 など日本語・中国語では鼻は「高い/低い」で表現するが、他の多くの言語では「長い/短い」で表現する。「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、歴史は変わっていただろう」というパスカルの『パンセ』における言葉は、実際には「court(短い)」であり、芥川龍之介の『侏儒の言葉』で「~鼻が曲がっていたら」となっているのは、これを「courbe (曲がった)」と誤解したためと言われ、鼻と「長い/短い」という表現との間の連想が働かなかったためではないかと考えられる。
このように、人間において、鼻がユーモラスに感じられたり、他方で侮辱に用いられたりする理由の仮説として、要は、ヒトの鼻は他の動物に比べ、肉厚で盛り上がりすぎる点が挙げられる。これは、一説によると、ヒトは最も寒い地域に適応した猿であって、肺へ入る空気を暖める仕組みとして、長い空気通路を確保するために鼻が高くなったという。しかし、鼻が高くなった理由として、これを男性性器の模倣であるとする考え方がある。鼻の大きい男性は性器も大きいとの俗説や、天狗のお面が男性器の象徴に用いられる場合があることなど、それを心理的に裏付けるものである可能性がある。
また東洋では鼻が高いことが美しい容姿の一つとされる(低い鼻梁は「鼻ぺちゃ」、孔が正面から見えるのが「天井鼻」と称される)が、これは鼻が高く大きいヨーロッパ系白人を基準とした美意識と考えられる。当の欧米ではコーカソイドの高すぎる鼻は醜いとされる傾向があり、美容整形では鼻を低くする手術が主流である(特に「鉤鼻」「鷲鼻」などが不細工とされる傾向がある)。
鼻を突き出すことは自己主張と見なされる傾向があり、たとえば自慢げであることを「鼻が高い」、問題に横から介入することを「鼻を突っ込む」、威張っているものを打ちのめすことを「鼻をへし折る」等の用法がある。また不満げな様子として「鼻を鳴らす」、勢い込んでいることを「鼻息が荒い」等、感情に直結した表現もある。また刺激臭は「鼻を突くニオイ」と言ったりするなど、鼻が嗅覚と関係しているために生じた表現も存在する。ヒトの鼻を外から見た外鼻の名称は、鼻の中央のタテの筋の部分を「鼻背」、鼻の頭を「鼻尖」、鼻尖の左右を「鼻翼」(一般には小鼻とも呼ばれる)、鼻の穴を「鼻孔」と呼ぶ。全ての動物の鼻に存在するわけではないものの、ある種の動物の鼻には凹凸のある文様が存在し、これを'''鼻紋'''と呼ぶ。この凹凸と文様は、ヒトの指紋と同様に一生変わらないものであるため、ウシなどの個体識別に用いられることがある。特に、ウシの中でも斑紋を持たない種類において重宝され、例えば和牛の登録にも利用されている。なお、持ち主がウシの耳介に、持ち主ごとに異なる形状の切れ込みを入れることで個体識別をする文化もある。しかし、この切れ込みは、当然ながらウシが産まれながらに持っているものではない。対して、鼻紋はウシが産まれながらに持っているものなので、鼻紋を用いた識別法は、ウシの生得的特徴を利用した方法と言える。 『鼻』はロシアの小説家ニコライ・ゴーゴリが1836年に発表した小説。
『鼻』は芥川龍之介が1916年に新思潮に発表した小説。夏目漱石の激賞を受け、彼の作家活動の原点となった。●鼻関連
嗅覚
鼻孔(鼻の穴)
鼻腔
鼻骨
鼻毛
鼻水
鼻糞
鼻血
鼻音
鼻音化
鼻歌
鼻笛
鼻行類
鼻炎
蓄膿症
擤鼻
●その他
体/頭/目/耳/口/肩/腕/手/足 鼻腔の構造・においの伝導機構 (ビジュアル生理学 内の項目)
鼻の健康についてあれこれ
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